救助費の決定

個々の救助契約の定めるところにより決定されますので、決まった算定方法はありませんが、一般的には被救助価額の範囲内で、救助の成功度合いや難易度、救助実費などを考慮して救助費を決定します。

LOF書式の場合

LOF契約ではロンドンにおいてロイズ評議会(ロイズ(https://www.lloyds.com))外部リンク の任命する仲裁人(Arbitrator)の仲裁裁定(Arbitration)によって救助報酬が決定されます。もちろん、仲裁に付する前に当事者間で救助報酬が決定されることも多いのも事実です。その場合には当事者は連名でロイズ評議会に対して書面でその旨を通知します。
通常、救助作業が完了するとロイズ評議会は仲裁人を一名任命します。仲裁人はロイズ評議会があらかじめ定めている仲裁人リストから選任されます。仲裁審は任命されたこの仲裁人によって運営され、船主または船舶保険者はロンドンにおいて事務弁護士(Solicitor)を起用し、更に事務弁護士は法廷弁護士(Barrister)を起用して同法廷弁護士を通じて仲裁審で主張と証拠の提出を行います。この仲裁裁定に不服の場合には、その言い渡しの日から起算して14日以内にロイズ評議会に書面で控訴(Appeal)の申し立てができます。なお、控訴審裁定は既に出されている仲裁裁定をかなり上回るか、下回るか、或いは仲裁審と同額かのいずれかであり、仲裁裁定額の少額の修正・変更は行われないと言われています。

仲裁人は当事者の主張や証拠に基づき、被救助財産の価額、作業の危険性・困難性、環境汚染損害防止軽減努力などを総合的に判断し、裁定額を決定します。 1989年海難救助条約第13条(ダウンロードPDF/9KB)では救助報酬の判断基準として次のような要素を上げています。

  • (a)船舶及びその他の財産の被救助価額
  • (b)環境損害を防止軽減するための救助者の技能及び努力
  • (c)救助者によって達成された成功の度合い
  • (d)危険の性質及び程度
  • (e)船舶、その他の財産及び人命を救助するための救助業者の技能及び努力
  • (f)救助者の費やした時間、出費及び損害
  • (g)救助者及びその救助設備が冒した責任負担及びその他の危険
  • (h)行われた作業の迅速性
  • (i)救助作業に提供される船舶またはその他の救助設備の利用可能性及び効用
  • (j)救助者の救助設備の準備態勢及び有効性並びにその価額

またロイズ評議会は上記に加えて2005年5月、費用が定額の仲裁制度(Fixed Cost Arbitration Procedure (FCAP))を導入しました。この制度は主として救助保証状金額が200万USドル未満の比較的小規模の救助を対象としています。仲裁費用が定額で低く抑えられているのに加え、審査は書面のみによる等手続きが簡略化されており迅速な裁決が期待できます

日本海運集会所書式の場合

本書式第8条(2)に具体的に記載されています。簡単にいえば、被救助価額の範囲内で救助実費+成功報酬が救助費となるような積み上げ方式が慣行となっています。

被救助価額

船体の被救助価額は救助成功の時における船価です。実務上、これを正確に算出することは容易ではありませんので、便宜上、船舶保険価額から修繕費を差し引いたものを被救助価額とすることもあります。もちろん、保険価額と時価とに相当差が生じていることが明らかな場合には専門の鑑定人に船価鑑定を依頼して決定します。

救助実費

救助業者は各自のタリフに基づき、救助に要した船舶費、燃料代、人件費、救助用具使用料等を請求してきますので、救助業者より提出された作業日誌とつき合わせ、救助船の使用日数が妥当であるか、救助用具はただ単に救助船に積み込まれただけなのか、また実際に現場で使用されたものなのかを確認していきます。

救助報酬(成功報酬、ボ-ナス)

救助報酬は救助実費に報酬率を乗じたものです。この報酬率を決めるにあたっては、救助作業の次のような要素を考慮して決定します。救助実費の一定割合(10%から100%)を救助報酬とするのが慣行となっています。

  1. 被救助財産の価額
  2. 救助業者によって達成された成功の度合い(救助者の技能)
  3. 被救助財産のさらされた危険の性質及び程度
  4. 救助設備の準備状態及び有効性並びにその価格
  5. 救助者が費やした時間、出費及び損害を含む救助者の努力
  6. 救助者及び救助設備が冒した責任負担の危険
  7. 作業の迅速性
  8. 投入された船舶及び資機材の利用価値
  9. 損害防止軽減のための救助業者の技術、努力
  10. 救助費支払いまでの期間に生ずる利息

救助報酬の斡旋・仲裁

本書式では救助報酬の協定は以上の諸要素を勘案しつつ当事者間で行われていますが、作業終了日から90日以内に協議が整わない場合、海運集会所の斡旋委員会に斡旋を求めることもできます(本書式第13条(1))。さらに斡旋が不調に終わったときは、同様に海運集会所に仲裁を求め、仲裁人の判断を最終的なものとすることもできます(本書式第14条(1))。

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