債権保全の手続き

船舶差押(アレスト)

衝突事故で過失割合及び損害額が確定するのは衝突後相当の日数を経過してからです。将来、損害賠償請求権を行使しようとした際、相手船主に賠償資力がない等で本船損害の回収ができなくなることを防ぐために、海事弁護士と連携し、相手側から保証状を取得する目的で相手船を差し押さえることがあります。

船舶差押の手続きは各国様々ですが、日本国内の場合、民事保全法第20条・第48条及び民事保全規則に基づく仮差押です。仮差押の申請は差押船舶の所在地を管轄する地方裁判所又は損害賠償の訴えがなされているときはその裁判所に請求金額を表示し、請求及び仮差押の理由を疎明して申請します。この際、請求金額の3割程度の保証金を供託しなければなりません。仮差押する側もお金が掛かります。なお、航海中の船舶(停泊中のものを除く。)に対しては仮差押することはできません(商法689条)。

保証状の発行

逆に本船が相手船側に差押さえられる可能性もあります。特に、海外での外国船との衝突の場合、本船が差押えを受けるおそれが高いので、まずは現地弁護士等を通じて、早急に相手側との交渉のチャネルを開き、本船の差押えを防ぎます。その一方で、当社は相手側が求める保証状(ダウンロードPDF/30KB)を準備します。なお、当社が保証状を発行する場合には被保険者殿からカウンタ-保証状(ダウンロードPDF/34KB)、質権が設定されている場合には質権者の同意書(ダウンロードPDF/55KB)を事前に当社に差し入れていただきます。

 

船主責任制限制度

船主責任制限制度とは本船のトン数に応じて下表のように船主の責任額を制限できる制度です。責任制限に関わる国際条約は過去の改正により責任限度額が引き上げられています。現在の国際条約は1996年5月に採択された「1996年の海事債権についての責任の制限に関する条約」(以下1996年議定書)ですが、2012年4月に「1996年の海事債権についての責任の制限に関する条約」の責任限度額改正が採択され、2015年6月8日に発効しました。日本ではこの責任制限にかかわる国際条約に準拠した「船舶の所有者等の責任の制限に関する法律」(以下船主責任制限法)によって国内法制化がなされており、2015年6月8日の条約発効と同時に船主責任制限法も改正・施行されました。(責任制限額引き上げの対象国は1996年議定書の批准国であることにご注意ください)

さて、ここでいうトン数とは「1969年の船舶トン数測度に関する条約」で計算されたトン数、いわゆる国際総トン数のことです。このトン数を保有していない船舶については、国土交通省から「責任トン数確認書」の交付を受ける必要があります。

イ) 物の損害に関する債権のみ

物の損害に関する債権のみの計算単位表

ロ) その他の損害に対する債権
    人の損害のみの場合および人の損害と物の損害とが同時に発生した場合

その他の損害に対する債権の計算単位表

(SDRとはIMF(国際通貨基金)により定められた特別引出権(Special Drawing Rights)のことであり、毎日変動します。その相場はIMFのホームページ(https://www.imf.org/)外部リンク、日本経済新聞の夕刊に掲載されています。)

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