海難救助と環境損害

環境損害防止軽減と船舶保険

世界的な環境問題、特に油濁問題への関心が高まる中、救助業者に課せられた義務も大きなものとなっておりますが、油濁損害防除費用等の海面の油濁防止費用は船舶保険にいう救助費とは認められておりません。しかしながら、海運集会所書式やLOF契約のもとでは環境損害を発生させるおそれのある船舶に対する救助作業中に、救助者が環境損害の防止軽減作業を行った場合に、その作業を勘案して救助費が増額されたときは、その増額部分は船舶保険でいう救助費の一部となります。ここで注意しなければならないのは、船舶保険でてん補されるのは、船舶を救助する際に油や有害物質が船外へ流出するのを防ぐための作業であり、既に船外が流出した物質の回収、除去作業及び海面清掃等は船主責任保険(P&I保険)でのてん補となります。

スコピック条項(SCOPIC Clause)

LOF契約は不成功・無報酬の原則です。しかし、環境損害の防止軽減作業が救助作業の一環として不可避であり、それに要する多大な労力と費用について何ら補償がなければ、救助業者は大規模な環境損害が懸念されそれに要する費用が莫大であるが、被救助財産価額が低いような場合は防止軽減に要した費用が全額回収できない可能性もあり、救助を安心して引き受けることができなくなってしまいます。

これを解消するために1989海難救助国際条約第14条(ダウンロードPDF形式、10KB)では、救助業者に最低でも費やした実費を補償し、環境損害防止軽減に成功した場合には実費に加えて割増金(30%から100%)を請求できる権利を与えました。これを特別補償(Special Compensation)といい、P&I保険でてん補されます。しかし、この海難救助国際条約14条では、特別補償規定の発動要件や特別補償の報酬決定の方法が不明瞭であり、またP&I保険でのてん補されるにも拘わらず、P&Iクラブが救助作業をコントロ-ルできないという諸問題が生じていたことから、これらの諸問題を解消するため、1999年にLOF契約の追加条項としてスコピック・クロ-ズ(ダウンロードPDF形式、262KB)(Special Compensation P and I Club Clause)が導入されました。

当該クロ-ズは本編と付則(Appendix)A,B,Cとさらに、P&Iクラブと財物保険者及びP&Iクラブと救助業者との間で取り決められた実務規定(Code of Practice)から構成されています。LOF2000ではこのSCOPIC条項を契約時に契約に含めるかどうかを選択できるようになりました。SCOPIC条項を発動させるかどうかの権限は救助業者側にあります。

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