貨物の全部または一部が損傷した場合

被保険貨物の全部または一部が損傷して仕向地に到着した場合は、損傷部分に対応する保険金額に損率を乗じて得た金額が支払保険金になります。

例1.
A商品 100個のうち、20個 損率30%
保険金額 1,100,000円
1,100,000円×20/100×30%=66,000円

例2.
A商品 100個のうち、 20個 30%損 / 15個 20%損
保険金額 1,100,000円
1,100,000円×(20×30%+15×20%)/100=99,000円
あるいは、
20個×30%= 6個(E.T.L.)
15個×20%= 3個(E.T.L.)
計 9個(E.T.L.)
1,100,000円×9/100=99,000円

E.T.L.とは、Equivalent to Total Lossの略で全損換算の意味です。


例3.
A商品 100個のうち、20個 損率30%
B商品 50個のうち、15個 損率20%
A商品INVOICE価額 1,000,000円(10,000円/個)
B商品  〃 1,000,000円(20,000円/個)
INVOICE価格合計 2,000,000円
保険金額 2,200,000円
A商品 10,000円×20×30%= 60,000円
B商品 20,000円×15×20%= 60,000円
120,000円 (INVOICE価額に対応する損失額)
2,200,000円×120,000円/2,000,000円=132,000円

上記の損率は、サーベイヤー(鑑定人)がサーベイにより協定した損率を適用します。サーベイヤー(鑑定人)の鑑定する損率は、次の法律に則って算出されますが、被保険者の主張される損率との間に隔たりがあって損率の協定が不能の場合、特に損品価額について合意に達しない場合には、実際に売却処分をして決定することもあります。

英国海上保険法第71条第3項
「保険に付された貨物または商品の全部または一部が損傷して仕向地において引渡された場合には、損害てん補の限度は、到達地における総正品価額と総損品価額の差額の総正品価額に対する割合を、評価済保険証券にあっては保険証券に定めた金額に、また評価未済保険証券にあっては法定保険価額に乗じた額である。」

これを式で示しますと次のようになります。
保険金額×(総正品価額-総損品価額)/総正品価額=支払保険金

例1.
総正品価額 1,100,000円
総損品価額 880,000円
保険金額 1,100,000円
1,100,000円×(1,100,000円-880,000円)/1,100,000円=220,000円

総正品価額、総損品価格は、いずれも到着地における卸売市場価額を用いるのが一般であります。これにはCIF価額に陸揚費用、輸入税、利益等が含まれており、英法上それぞれGross sound value、Gross damaged valueといいます。

この方式は分損計算方式(Average loss settlement)といわれ、市場価格の変動に影響されず損率を算出する貨物保険特有の計算方法であります。なお、この方式は単に損率を決定するための方式でありますから、損傷貨物の売却は被保険者の勘定においてなされ、売得金は被保険者が収得した上で、この方式により算出された保険金を受取ることになります。

外航貨物海上保険の損害てん補については、英国の法律または慣習に基づきなされる旨保険証券に規定されています。

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